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図2.染色体テロメアGテイルの長さは血管内皮機能などの

疾患バイオマーカーNezu, T., et al., EBioMedicine. 2015, 2: 958-65. より引用

図1. テロメアHPAによるGテイルテロメアDNA配列長の測定方法

G-tail Telomere HPA 

 

 テロメアHPAは田原研究室で研究開発された(Tahara H, et al., Nat Methods., 2005, 2: 829-31.)、「Gテイル配列の長さ測定方法及びそれに用いるキット(特許第5514401号 )」に基づくテロメア長測定技術である。図1のように溶液中のテロメア配列DNAに特異的に結合するHPAプローブとその化学発光を利用しテロメア長を測定する。従来のサザンハイブリダイズ法などに比べ簡便・高感度でハイスループット化も可能であり、特に一本鎖テロメアであるGテイル長の測定に秀でている。

 テロメアは真核生物の直鎖状染色体末端の基本構造である。DNAに末端が有るとDNA修復機構が発動され、細胞周期停止、細胞老化、細胞死などの原因となる。また、染色体末端融合による染色体異常、細胞異常の原因にもなる。ヒトのテロメアDNAは5’(TTAGGG)3’繰り返し配列である。その最末端では約300塩基の3’突出一本鎖テロメアDNA (Gテイル)が二本鎖テロメアDNAに潜り込みテロメアループを形成し、DNA損傷認識や末端融合から免れている。

 テロメアDNAは細胞分裂時の半保存的複製とプロセシングで短縮する。テロメア伸長酵素テロメラーゼの活性は生殖細胞、幹細胞、がん細胞、抗原感作したTリンパ球でみられるが、体細胞では活性がない。ヒトの2本鎖テロメア長は平均約9 Kbpで、心臓→脳→脾臓→腎臓→肝臓と細胞分裂しない臓器順に長く保たれている。また、個人差があり、ある臓器で長いヒトは他の臓器でも長い。末梢血白血球で、若年者は長く高齢者は短い、短縮速度は50bp /年程度、喫煙者は短い、運動を行う中高年者で長い、短睡眠時間群では短い、などが国内外研究者から報告されている。テロメア長はヒトの加齢、炎症、ストレスなどの状態を検出する指標に成り得る。

 テロメアHPAを利用し、培養血管内皮細胞や肝細胞でGテイルと二本鎖テロメア長其々が細胞分裂に伴って短縮し、テロメラーゼ強制発現で伸長する事を見出した。テロメアループ蛋白質複合体シェルテリンの阻害剤テロメスタチンの添加でループを崩壊させた時、Gテイル長短縮が見られる事も示された。また、心血管障害を持つ血液透析患者(Hirashio, S., et al. Clin J Am Soc Nephrol, 2014)、脳血管障害を持つ認知症患者(Nezu, T., et al. EBioMedicine, 2015) の末梢血細胞のテロメア測定でGテイル短縮が二本鎖テロメアよりも血管障害患者の予後予測のバイオマーカーとして優れている事を見出し報告した(図2)。

 

                                                                                                              

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