Hiroshima University Institute of Biomedical & Health Sciences
Department of Cellular and Molecular Biology
マイクロRNA
マイクロRNAとは、
microRNA (miRNA)は、タンパク質をコードしない約22塩基の小さなRNA です。 miRNAは標的mRNA(メッセンジャーRNA)の3‘非翻訳領域に結合することで、遺伝子発現を抑制しています。転写後にもタンパク質の翻訳のON/OFFを調整できる機能を持っています。すでに、miRNAは発生や分化、がんや細胞の増殖やアポトーシスなど様々な生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たしていることが知られています。さらに、miRNAの発現異常はがんを含む様々な疾患に関与していることも報告されています。
miRNAが寄与する老化シグナルを同定
これまでに当研究室では、乳がん細胞に老化を誘導し、増殖や転移能などを抑制するmiRNAとして、miR-22を同定しました。miR-22は、若い細胞と比較して老化細胞で発現量が増加しています。これに対し、多くのがん細胞においてmiR-22の発現量は顕著に低下しています(Figure 1)。
さらに、miR-22を乳癌転移モデルマウスに投与することで、実際に腫瘍の増殖や転移を抑制することが示されました(Figure 2)。miR-22は正常細胞と比較してがん細胞での発現量が顕著に低下していることから、がん細胞で発現が低下しているmiRNAを補充するという新たながん治療法を今後確立できるかもしれません。
(関連論文;miR-22 represses cancer progression by inducing cellular senescence, Dan Xu et al. J Cell Biol. 2011 Apr 18; 193(2): 409–424.)
現在進行中の研究内容
-
老化を誘導する miRNA の網羅的解析とmiRNA による老化誘導機構のネットワーク解析
-
老化誘導miRNA によるがん抑制機構の解明
-
小分子 RNAを利用した核酸医薬品の開発 (企業や他研究室との共同研究)
Figure 1. MiR-22 is down-regulated in various cancer cells.
qRT-PCR analysis shows relative quantitation of miR-22 expression level (vs. 184hTERT) in various human cancer cells. Expression levels of miR-22 in various cells were relative to that in 184hTERT cells set at 1. U6 was used as an internal normalization control.
Figure 2. MiR-22 inhibits tumor growth by inducing senescence in vivo.
(A) Representative fat pad orthotopic tumor images of mice on day 46 after inoculation. Quantitation of bioluminescence emitted from the primary tumor.
(B) Representative histochemical detection of SA-β-gal activity in vivo in primary tumor on day 46 after inoculation. The percentage of SA-β-gal–positive cells (blue-stained cells) is presented in the histogram.